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ミき下の【スミつき】

脳の溶ける文章

【屋根飛びジョーイ】

 やぁ、僕の名前はジョーイっていうんだ。テンガロンハットかぶってる奴はだいたい友達さ。
 屋根から屋根へと飛び移るそれが僕の特技であって趣味。ついでに言うと仕事にもなってる。
 例えば、あそこの屋根からあそこの屋根まで飛び移ってよ、なんて依頼が来るのさ。まぁ、電話かメールでの予約依頼がほとんどかな。
 ごく稀だけど、街中歩いてたら急に頼まれるなんてこともあるよ。
 まぁ、相手もこれが商売なこと知ってて言ってるから、(一応確認はするけどね)それで僕はオーケーとかあいよ、なんて適当に言葉をかけてそれを実行に移す。
 もちろん、それより先に依頼が来てたらそれが優先なんだけど。
 で、飛び移るわけ。その場で依頼者はありがとうとか助かったよとか礼を言って、(言わない人もいるけどだいたいは言うよ)指定の代金を僕に払う。
 僕の仕事の大まかな流れを説明するならだいたいそんな感じ。
 最近は企業とのタイアップも来てて、二週に一度くらいかな。屋根の上に企業の看板立てたりとかして、CMにするってわけ。
 けっこう前になるけど、社名が変わったから、旧名のロゴが入った屋根から、新社名の入った屋根に飛び移るCM撮影なんてのがあって、よく考えたと思ったよ。
 そういえば認知度が上がって、オファーが殺到し出したのもそれがきっかけかもしれないな。
 今でこそ値段は屋根から屋根への距離とか風向きとか湿度とかで料金を決めてるけど、マネージャーがついてそのへんを決めてくれるまでは、本当に大変だったよ。
 始めた当初はこんなことやってる人いなかったからさ、言い値でやってたよね。やっぱり一人でやってた頃が一番苦労してたかな、うん。
 不動産業と屋根飛びの両立。まぁ、あの時は半分趣味だったもんだから、義務感とか一切なく今より純粋に楽しめてたかもしれないけどね。
 例えば、趣味を仕事にしたなんて羨ましいってよく周りの友達とかは言うけど、僕から言わせてみれば仕事としてやってるから、やっぱ依頼する人の期待に沿わなくちゃならないっていうのもあるし、そんなに楽なもんでもないんだよね。
 この業界も去年流行語にも選ばれたし、割と浸透してきたみたいだし、僕としても嬉しいかな。もちろんまぁ、若手の人たちにはちょっと言いたいことはあるけどね。
 そうだな。基本さえしっかりしてればどうにかなると僕は思うよ。
 この仕事をやってくのに一番大切なのは、やっぱ脚力かな。うんまぁ、屈伸力というかふくらはぎの力かね。
 んで二番目が観察力かなぁ。風向を読むとか距離とかそっちの方ね。
 一番目の脚力がどんなにあったって、この二番目が抜け落ちてることがあると、事故を招くからね。まぁ、僕みたいにやってる人たちは分かってると思うけどね。
 今から目指そうっていう人たちは、決して体力とか筋力だけじゃなくて、多少頭使うんだっていうところは分かっておいて欲しいよ。
 そうそう、本当に目指してるんだったら、僕の開設してる屋根飛び養成学校があるから、お勧めするよ。もちろん知識も経験もいらないし、ゼロからちゃんと教えるよ。
 しかも、今なら受講料が一割引なんだ。今しかチャンスないしお勧めだよ。
 まぁ、無理になんて言わないけどね。独学で頑張ってる人もいるし。
 そうそう、来年の夏には一応僕が主催で屋根飛びフェスティバルなんかも企画してる。都合あったら来てみてよ。
 特別に僕の着てるカウボーイの服の貸し出しもやってるからさ。

(終)