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【急突なモヤ】ep.3

 この辺りで一旦区切りをつける。切りがなくなってしまうからである。
 言うならそれこそが狙いの一つでもあるのだが。
 区切れる箇所というのはいくつかあり、この場合は大声である。
 他にもかすれ声、顔、大音、大きな動作、猫なで声、語尾上げ、語尾下げ、素、大笑い、半笑い、無機質、笑み、繰り返し、遠ざかり、近づき、しわがれ声、造語、返答、過剰、効果音、破壊、騙し、消失、野生、直球、変化球、憑依、宣言、感謝、謝罪、激怒、放棄、整理、頓知、洒落、注意、別れ、呆れ、放置、接続などがある。
 ちなみに、挙げきれなかった分はこの何倍もある。
 また、これらはどのようにも複合することができ、一つ一つをあげつらっていくとこれまた大変な量になる。
 とりあえず数で示しておくと、ざっと十万通り以上。以上と記したのは、個人の尺度によってパターンは様々に変化し、限りなく未知数に近いためである。
 話は草原に戻る。叫んだ俺は、もちろんそれだけでは終わらない。
 小一時間、長いときには三時間以上になることもある。そうなると俺自身が飽きてくるが、もはや執念である。
 そして、ようやくやり終えてからは始めに戻る。
「えっ? 何? はっ? どういうこと、えっ」
 こっちが聞きたいぐらいである。どういうことなのだろうか。
 だが、言及はすなわち敗北を意味する。少なくとも俺のルール上ではそうなっているのだ。例外はない。
「こんな濡れたジーパンが放置されてるなんて、日本でこんなことあるの?」
 このように、ある程度まで行ったら、再び最初に戻って、アプローチを変更してまた始める。
 場所は変わらず白い部屋。
 何かの番組などではない。そういった方面を意識した作りの場所ではあるのだが。
 そして、日本というワードから飛躍させて、地中海まで飛躍し、その海で泳ごうとしたとき、突然ドアの開く音がする。
 ぽかんと半開きの口でそちらに目を向けると、若く小柄なディレクター風の男がこっちの方に小走りで寄ってくる。
 そして、そいつは焦った様子で濡れそぼったジーパンの置かれた机の前にいる俺に向かって、矢継ぎ早にこう言うのだ。
「あぁー! すいません! 僕さっき服燃やしちゃって、乾かしてたんでした! 本当にすいません!」
 そのままUターンして、同じ小走りで戻っていこうとする男の肩を持ち呼び止める。
 俺の一日は終わらない。

 

(終)

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