ミき下の【スミつき】

Overturn Of Encephalon

【ポリンキー・ポロン】ep.2

 そう、上の階はボーリング場だ。
 すると、百歩譲って、落ちてくるにしても、ボーリングの球かピンであったらまだ納得出来た。
 しかし、よりにもよって、ポリンキーとは。
 ふとポリンキーに関する記憶を呼び起こす。
 昔、この菓子に顔がついたキャラクターが、軽快な音楽に合わせて、「ポリンキーポリンキー、三角形の秘密はね。教えてあげないよ」などと歌うコマーシャルがあったような気がする。
 それも、懐かしのコマーシャル特集とかいう番組の中で紹介されたので、生で実際に流れていた時代を知らない。
 そこで気づく。
 よもや、今さっき何もない空間からポリンキーが落ちてきた事象。
 それこそがポリンキーの秘密とでもいうのだろうか。
 まさか、そんな。
 もし仮にそれが秘密だとして、誰がどうやったのだ。
 いや、ポリンキー自体の秘密だから、誰ということもないのか。
 だが、商品として売られているなら、必ず開発者がいるわけで。
 企業秘密ということなのか。
 あの歌を考察するに、ただ単に製造方法のことを言っているわけではあるまい。
 あくまで個人の考察にすぎないが。
 だが、いかんせん時代が前すぎる。
 菓子自体は一般的に売られているにしても、コマーシャルの意味について答えられる人はまだご健在だろうか。
 そうじゃない。
 コマーシャルは別として、ポリンキーが突然現れるなどということは起こり得るのだろうか。
 ここで一人で煩悶していても答えの出る気はしない。
 家で葉書でも書いて送るとしよう。
 それより、さっきからチーズの香りが漂ってくるのである。
 後方から。
 もう一度振り向いてみる。
 もし、無くなっていたらという恐怖に似た思いもあったが、幸いそれは同じところにあった。
 それから、自分は何を思ったか中腰になって手を伸ばしたのだ。
 そして、その菓子を摘んで、食べた。
 うまい。
 網目が活かされた、サクサクとした食感。
 安心感を覚える、甘口の味。
 そして、鼻を抜けていくチーズの風味。
 最後にそれを食べたのはいつだったか見当もつかないが、相当前なはずだ。
 そうか。
 忘れて欲しくなかったんだな。
 一人飲み終わったコーヒーカップの底を視界に捉えながら、何度も菓子の味を反芻しながら頷く。
 飲み終わった後だが、この塩の塩梅はコーヒーにも合いそうだ。
 思い出した。
 がきの頃にスナック菓子一つ買って貰えなかった貧しい家庭を。
 そして決めた。
 今の自分には金がある。
 店を出たら、一袋買いに行こう。
 駅前のコンビニならきっと売ってるだろう。
 そのとき、上からごろごろごろと地響きに似た音がし、まもなく、先ほどとは比べ物にならないくらい濃厚なチーズの匂いが漂ってきた。

(終)