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【脳細胞の死ぬ音】

がオん。
みシミシみし。
ゼいこゼイこぜイコ。
改造された機械兵達が背中に空いた穴から一遍に流れ込む。
お腹に突き刺さった胡瓜の汁がぼたぼたと音を立てながら急須の中に落ち、何も知らない半纏を着た女が眠気眼で茶を入れている。
正面に聳え立つ分厚い鉄壁がグらグラと揺れている感覚がする。
あたりめの駄菓子の黒い部分には何も書かれておらず、その瞬間に答えを察する。
向かいに立っている女性の肩甲骨の膨らんだ部分から赤い風船がはみ出していて、呼吸と一緒にコわコワと鳴きながら徐々に空気を孕んだ姿を現し始める。
興味本位で蝋燭を食べ始めた赤子を余所に、もう一人は鏡の中で吐き出している。
虹の架かった空をマじナイの類いと捉え、閃光がヨぎり、死を察する。
ある角度から見ると円筒形に見える直方体。
扇風機と喋る小柄な老人がネっチョリと音を出しながらあたりめの駄菓子を吐き出す。
鏡に映った黒い部分にあたり。
神社の跡地に生命が宿り、埋めた木の下には骨の欠片と赤色のゴム。
途端に虹は消え、空は黒く染まり、ゴあゴアという音と共に転倒する銀色の何か。
まジナイを唱える女の発する蒸気は赤子の顔に掛かり、隣に座った中年女性の腹から突き出た緑色の影。
壊れかけた道路の端に延々と、点々と火の付いた蝋燭が並べられている。
同時に手術室のランプが点り、小洒落た見た目の機械兵が入る。
掃除をしながら独り言ポつり。
便益で満たされた部屋を見渡す。
部屋の角には割れた陶器の一部と使用済みのマスクと烏賊の足。
呼吸をするうち、ふと背中に違和感を感じる。
道を辿りながらふと後ろを振り返るとブぃーんと言う奇声を発する老人が一人。
折れた箒に唄う唄が眠気を誘うマじなイと化す。
扇風機曰く、万物の裏側には常に死が張り付いている。
ベきベキ折れ始め神社の木が、ある一瞬だけビルに見える。
弁当箱に残った緑色の汁。
暗がりで必死に何かに改造を施す小柄な体。
微生物を裏返し、茶と書き殴る。
啜り泣く声が漏れ聞こえる。
可愛い紋様の急須を見つけて燥ぐ、マスクを外そうとしない少女。
細胞の声が聞こえると言って、住処を写した外科医がメスを使って硬い物を切る練習をしている。
物音のしない物置の中から、鼻をつくような異臭がする。
遠くの方で自転車を漕いでいる男の荒い息遣い。
凸凹の地面には溶け切った蝋燭とガラスの破片が散乱している。
物と物とが勢いよくぶつかる鈍い音。
自転車のひしゃげる音と女の悲鳴が交差して、巨大な壁面に反響した。
倒れるぞ!
 
(終)