ミき下の【スミつき】

Overturn Of Encephalon

【兵庫・イン・カロライナ】ep.2

「あのー、ちょっといいかな」
「あっ、はい」
「あー、なるほど。そっか。あー、ごめんごめん。誤解してたよ。日本で育ったけど、出身はアメリカの方ってことでいいのかな?」
「半分あたりです」
「そうだよね。うん。えっ、何て言ったの? 半分?」
「生まれも育ちもノースカロライナです」
「うん、ちょっとしつこいかな。本当なら先生も黙ってそっちに座ってたいよ」
「本当です。信じてください。一昨日飛行機で着陸しました」
「すごい近々だね。ご両親」
「カロライナです。一番好きなウルトラマンはカロライナです」
「そんなダイナですみたいに言わないでよ」
「本当です。信じてください。百歩譲って、信じなくてもいいので、三歩進んで信じてください」
「もう無茶苦茶だよ」
「無茶苦茶カロライナです」
「えっ?」
「実は英語もぺらぺらなんです。ずっと隠してましたがイングリッシュが得意です」
「じゃあ、こうしよう。竹津草平くんが英語を喋れたら、先生もみんなも竹津くんを信じる。ね! それでいいよね?」
「竹津草平ってだれですか。ぼくはエリック・パトリオットです」
「分かったよ。エリック」
「できたらパトリオットの方で呼んでいただけますか」
「ああ、失礼パトリオットくん。君は英語が話せるらしいね」
「ええ」
「急に大人びないでよ。そんな準備できてないから」
「ソオリイソオリイ」
「ずいぶんカクカクした英語だね」
「まだこれで九十パーセントです」
「ほぼ全開じゃん。さっきぺらぺらって」
「わたしは英語をぺらぺら話すことができます」
「うん」
「わたしは最も英語をぺらぺら話せる人の一人です」
「だから話せって。英文の例文の訳文みたいなことばっか言ってないで」
「わたしの兄はわたしよりももっと英語をぺらぺら話すことができます」
「うるさいな! だから英文の例文の訳文みたいことばっか言うなっての!」
「はっ!!」
「今度はどうしたの?」
「ぼく、気づきました。ぼくは兵庫県生まれ兵庫県育ちでした」
「えっ!? ち、ちなみに名前分かる?」
「竹津草平です。アンタレスはだいっきらいです」
「そうだね。やっぱり緊張してたのかな。緊張のぶり返しっていうのは、大人だってあることだから、全然気にしなくていいよ。例えば、人間ドックの結果が返ってきた夜に、よく分からない数値が跳ね上がってたのをふと思い出したときとかね」
「はい。新しいクラスの皆さん、ちょっとぼく、舞い上がってたみたいで本当にごめんなさい。この先たとえ何回転校しても、もうこんなことはしません」
「はい。ということだから、できたら笑って流して、どうか竹津くんのことをわるく言わないであげてほしい。あと、ついでに補足すると、先生の本当のプロフィールは、ニュージャージー州出身のモッコス・ピューリクンです」
「先生っ!」

 
(終)