ミき下の【スミつき】

Overturn Of Encephalon

【無慈悲な開発】

無慈悲な青年は連れてきた女を無慈悲な寝台の上に横たわらせた。

青年は己の無慈悲さをもってして、一度無慈悲な格好をすると、それに沿わせるかのように女にも同様に無慈悲な格好を取らせた。
無慈悲さの度合いでいうとまだ十パーセントにも満たない。
無慈悲な青年の中でもまだまだ序の口の無慈悲度である。
ほんの一時間前まで有名大学生の女はキャンパスのテニスコートで試合の練習をしていた。
無慈悲さとは無縁の国内随一の有慈悲な場所だ。
だが、休憩の際に一人で人通りの少ない裏の水飲み場まで来たとき、不意に後ろから無慈悲な青年が現れた。
青年はあらかじめ用意した無慈悲な手段、特製無慈悲クロロフォルムを使用して無抵抗な女を無慈悲な睡眠へと誘った。
そこからの成り行きはそこはかとなく無慈悲だった。
無慈悲な夢を見る、呼吸をするだけの無慈悲と化した女をコンビニの前に三十分以上止まっていた無慈悲な車に乗せ、前を横切るどっちでもない男に無慈悲なクラクションを鳴らすと慈悲が全くないワンボックスカーを走らせた。
薄暗い無慈悲な部屋で女は目を覚ます。
しかし、そこご無慈悲な空間だとは知らない。
やがて女の途切れ途切れの記憶は繋がっていく。
暗い部屋で寝かされている状態と身につけているテニスのユニフォームの不整合さに気づき、慌てて体を起こそうとした。
だが、女の体は強固な鎖で固定されていて動かなかった。
無理に動かそうとしたことから、無慈悲な鎖と無慈悲な鎖の間に腕や足の肉が挟まり全身に激痛が走る。
それに加えてふくらはぎが攣りかけて気絶しそうになった。
だが、持ち前の有慈悲さを盾に自我を保った。
無慈悲な青年は無慈悲さを隠して、ゆっくりと拍手をしながら歩み寄った。
その無慈悲な拍手に女は気づいた。
ここが無慈悲な青年の住む家だということに。
女は叫ぶ。
まだわずかに点在する全身の有慈悲さをかき集めて力の限り叫ぶ。
だが、青年の無慈悲さの方が一枚上手だった。
防音設備の整った地下室のため、外には七十億デシベル以上の音でないと外に一切漏れないのだ。
例えそれが、無慈悲であっても有慈悲であっても。
そのことを知らない女はとうとう残っている有慈悲さを全て吐き出してしまった。
それを見計らったかのように青年はある程度無慈悲なことを言った。
それから、無慈悲な戸棚から無慈悲なラッパの先端が無慈悲に二つくっ付いたような見るからに無慈悲なゴム製の装置を取り出した。
青年は大きな声で「無慈悲!」と叫ぶと着ていたシャツをびりびりに引き裂いて、装置を自らの両乳房に強引に貼り付けると、そのスイッチを入れた。
無慈悲な肉声を上げながら無慈悲に震えだす無慈悲な青年。
女はその日の夕方解放された。

(終)

広告を非表示にする